今更ですが、NPO法人玉川まちづくりハウスは1991年、東京世田谷区玉川地域で、「すまいや、身近な環境の改善や保全に取り組む地域住民活動を支援する専門家組織」として誕生しました。
当時、世田谷のまちづくりはある意味絶好調の時期にあり、都市デザインと自治と参加をテーマに全国から注目を集めていました。「ハウス」という言葉は、当時世田谷区で考えられていた「まちづくりセンター」構想の中から生まれた概念です。市民の中にいる専門家が核となって、市民主体のまちづくり活動をお手伝いするような支援組織を「まちづくりハウス」として立ち上げていくという構想が模索されていたのです。玉川ハウスはその一号でした。
以来30年余、まちづくりの世界は多岐にわたり、さまざまな場所、形でまちづくりは展開されています。玉川ハウスは“まちのみなさん”からの“暮らしとまちへの想いを重ね合わせ具体的な活動を行おうと努力してきました。
今年は新型コロナウイルスの影響で開催できませんでしたが、2005年から毎年開催してきたデイ・ホーム玉川田園調布をお借りしての玉川まちフェスタ、デイ・ホームを拠点として活動する「地域の福祉を考える楽多の会」の活動を支援すること、お隣さまお茶会や、ここからカフェ九品仏も人と人との結びつきの中からしか「暮らし続けたい街」は生まれてこないとの思いからです。
玉川田園調布住環境協議会の事務局を引き受けていることもその一つです。
玉川田園調布1、2丁目は2000年に地区計画が施行され、以降玉川田園調布住環境協議会が活動しています。皆さんの思いで作られた地区計画ですが、残念ながら、それで住環境がすべて守られるわけではなく、域内の敷地は小さくなり、緑の面積が減少していくことを止められません。敷地の最低面積限度を決めているために、かえって土地を分割できず困るというお話をいただくこともあります。より良い住環境とは何か?を日々考えさせられています。
日本では土地は大きな資産であり、相続の際に課せられる相続税は一生のうちでも大きな課題です。
地区計画:都市計画法第十二条の四第一項第一号に定められている、住民の合意に基づいて、それぞれの地区の特性にふさわしいまちづくりを誘導するための計画
英語に「welfare」という言葉があります。日本国憲法作成時に、GHQ案の英語原稿翻訳を行う際に対応する言葉が見つからず、「福祉」と訳されることになりました。「福祉」は、いま日本で、広義的には「公共の福祉」などと使われますが、狭義的には「社会保障」や「生活保護」を指す、どちらかというと「最低を保証する」というようなイメージのように感じます。しかし本来、「福」と「祉」は、ともに「しあわせ」を意味する漢字です。
20年活動をしてきて、「Welfare」はもしかすると、まちづくりと訳した方が良かったのではないかと感じるときが多々あります。まちの「welfare」のためにする活動はどれもすばらしい!どれもみな、すてきな「まちづくり」活動です。
ハウスは、”想い”が届くことを楽しみにしています。その“想い”をいっしょに人々に呼びかけ、“想い”を重ねあわせて具体的な活動に取り組む、まちづくりの醍醐味とは、みなさんと一緒に“想い”を実現することだと思うのです。(伊藤雅春)
(玉川まちづくりハウスニュース「みんなでホイッ!」2021年2月号より)